
目次
アトピー性皮膚炎と綿。肌への影響と選び方
要点まとめ
アトピー性皮膚炎でお悩みの方にとって、衣類選びは大切なポイントですね。綿なら安心と思われがちですが、綿の種類、織り方・編み方、縫製方法によって肌への影響は大きく変わることが研究で明らかになってきたようです。
重要なのは「触り心地の良さ」「汗の処理能力」「摩擦の少なさ」。綿のなかでも超長綿(スーピマコットンなど)を使った天竺編みやガーゼ生地、縫い目やタグのない商品が症状軽減につながるかも、ということです。
アトピー性皮膚炎の仕組みと症状
アトピー性皮膚炎は、まるで家のセキュリティシステムが故障しているような状態。皮膚が乾燥しやすくなったり、刺激から身を守るためのバリア機能が弱くなります。結果、アレルゲンに反応しやすくなってしまい炎症、かゆみにつながるのです。
症状の流れ
- 肌のバリア機能が弱くなる
- ちょっとした刺激でかゆくなる
- つい掻いてしまう
- さらにバリア機能が壊れる
- もっとかゆくなる...
この悪循環からなかなか抜け出せないのが、アトピー性皮膚炎の特徴です。
実は国内だけで125万人以上の方がアトピー性皮膚炎に悩んでいて、実際にはもっと多いと考えられています。決して珍しくはないのですね。
服選びの基本
- 肌触りがよく、なめらかでチクチクゴワゴワしない
- 吸汗性・速乾性。 汗を吸って外に逃がしてくれる
- 摩擦が少なく、動いたときにこすれてチクチクしない
「汗が肌に残っている」「汗が服に残っている」「摩擦がある」「肌に合わない成分の残留」といった条件で刺激を感じます。
汗にはミネラルなども含まれているため、残っていると刺激を感じることも。関節の内側も汗疹(あせも)になりがちですよね。乾いた繊維より濡れた繊維の摩擦が強くなるということもあるそうです。
「汗が残りにくく、肌に刺激を感じにくい衣服」を選ぶのがポイントといえます。※綿に限らず条件を満たしていればOK
綿素材とアトピー性皮膚炎
綿は肌に優しいイメージですが、実際のところはどうなのでしょうか?
「綿なら何でも大丈夫ではない」ことが、最新の研究でわかってきています(実験や論文の紹介はこちら)。それを踏まえて、綿製品の選びかたをまとめました。
綿の性質
メリット
- 汗をよく吸う
- 空気を通しやすく蒸れにくい
- 静電気が起きにくい
- 洗濯に強く長持ち
デメリット
- 一度濡れると乾きにくい
- 洗濯でごわつくことがある(水量を増やす、乾燥機で完全乾燥などで改善するかも)
- 短い繊維が多いと、肌に触れてチクチクする可能性がある
吸汗性や通気性、静電気の起きにくさは刺激になりにくくよい点です。
反面、綿の繊維が短かったりごわつきがあるとチクチク感じるかもしれません。
綿の種類による違い
同じ綿100%でも種類によって大きく特徴が違います。より肌にやさしい服を選ぶのであれば知っておきたいポイントです。
超長綿(高級綿)
- スーピマコットン、エジプト綿、スビン綿など
- 繊維が長く(34mm以上)、なめらかな肌触り
- 肌への刺激が少ない
一般的な綿
- 世界の生産量約90%を占める一般的な綿
- 繊維長は中程度(26~32mm)
- 手頃な価格で安定した品質
短繊維綿
- インド綿など
- 繊維が短く(20.6mm以下)サラサラした質感
- 通気性が良い
アトピーの方には、繊維が長くて滑らかな超長綿(スーピマコットン、エジプト綿、スビン綿など)が合うかと考えられます。
詳しい綿の種類については「綿の種類と特徴」をご覧ください。
織り方・編み方による影響
同じ綿でも、織り方・編み方によって生地の吸汗性(吸水性)、速乾性、通気性などがかなり変わります。
編み物(ニット)
織物
天竺編みやガーゼのような通気性が良く、肌への負担が少ない生地はおすすめです。ボトムスなど、硬めの生地であればゆったりとしたデザインが通気性のために良いかと思います。
織り方・編み方の詳細については「綿生地の特徴:織り方、編み方、加工方法」をご覧ください。
縫製とタグについて
素材だけでなく、縫製方法(縫い方)やタグの処理も肌へ影響することがあります。
縫製のポイント
縫い目の凸凹は刺激の原因になりえます。そのため縫い目がフラットになっている製品や、縫い目がないものを選ぶと安心です。
Tシャツでは脇に縫い目のない丸胴タイプもありますし、縫い目の処理がされていれば、フラットシーマ、伏せ縫いなどの説明が記載されています。
タグの処理
きっと首元のタグが痒いと感じた方もいらっしゃると思います。まさにそれなので、タグなしやプリントタグの衣類を選んだり、タグを取り除いてしまうのも手です。単に切り取るとチクチクしかねないので、できるだけ丁寧に取り除きます。
加工や染色による注意点
「形態安定加工」や「ノーアイロン加工」の衣類は、肌に刺激となる化学物質が残っている場合があります。購入後は1〜2回水洗いしてから着用するのがおすすめです。
染色工程でも色の定着のために強めの薬剤を使っていることがあるそう。特に草木染など本来色落ちしやすいものは、念のため注意しておくとよいでしょう。(そもそも植物原料が合わないというケースもありえます)
実験や論文の紹介
アトピー性皮膚炎と綿素材について、興味深い研究をご紹介します。
リヨセル繊維と綿の比較
30名の方に綿とリヨセル(ユーカリから作られる繊維)の衣類を1週間ずつ着てもらった研究では、リヨセルの方が柔らかさ、温度調節、湿気調節において好まれました。アトピー性皮膚炎の方でも、かゆみの軽減と水分蒸散量の改善が見られています。 出典:Fabric preferences of atopic dermatitis patients
銀コーティング繊維と綿の比較
12名のアトピー性皮膚炎患者を対象とした研究で、海藻を組み込んだ銀を含むセルロース繊維と綿を比較したところ、特殊繊維の方が症状スコア、水分蒸散量、患者の感想すべてにおいて良好な結果を示しました。 出典:A pilot study of silver-loaded cellulose fabric with incorporated seaweed for the treatment of atopic dermatitis
極細メリノウールと綿の比較
「DESSINE研究」では、生後4週から3歳までのアトピーの赤ちゃん39人に、極細メリノウールと普通の綿の服を比較してもらいました。極細羊毛製の服が綿製よりもアトピー症状を大幅に改善させたという結果が得られています。 出典:Determining Effects of Superfine Sheep wool in INfantile Eczema (DESSINE): a randomized paediatric crossover study
これらの研究から分かるのは、「素材自体にこだわるよりも、その生地の性質(肌触りや吸放湿)が大事」ということですね。
具体的な綿製品の選び方
商品表示・タグからわかること
- 🏷️「スーピマコットン」「エジプト(ギザ)綿」「海島綿」「超長綿」は肌触りよい
- 🏷️「ガーゼ」「天竺」「フライス」などは比較的低刺激
- 🏷️「丸胴」「縫い目なし」などの縫製表示
- 🏷️「形態安定加工」「防シワ加工」はよく洗いたい
- 🏷️「オーガニックコットン」は栽培方法のため肌触りの良さと関連はしない(繊維が長い品種ならなめらか)
アイテム別の選び方
- 🩳 肌着・インナー:超長綿が理想的、タグなし設計を優先
- 🧥 パジャマ:ガーゼ織りや二重ガーゼ、ゆったりサイズ
- 👕 Tシャツ:ほとんどが天竺かフライス編み。大きめサイズで摩擦を軽減
まとめ
アトピー性皮膚炎と綿素材について、綿だから安心ではなく「触り心地が良く、汗を吸い・発散しやすく、低刺激」なものを選ぶことが重要だとわかりました。
肌質は人それぞれですし、季節や体調によっても変わります。これが絶対というものはないですが、少しでも満足できる服選びができれば良いなと思います。毎日身につけるからこそ、快適なものを選びたいですね。
この記事は、日本皮膚科学会のガイドラインや複数の学術論文を参考に作成しています。症状が気になる場合は、必ず医療機関にご相談ください。
参考
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024年版(pdf)
- 化学繊維がアレルギー性皮膚炎患者の皮膚に与える影響
- 繊維製品の規制関連
- 成人型アトピー性皮膚炎―その頻度と増悪因子―
- アトピー性皮膚炎の痒みに対する肌着の役割
- 衣料用柔軟剤の効果発現メカニズム
- 日本アトピー協会
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