綿の基礎知識|繊維、4種類の綿花と特徴
基礎知識
2025年6月10日

綿の種類と特徴

綿。それはアオイ科ワタ属の植物…ですが、一口に「綿」と言っても、実はひとつの種類ではないことをご存知でしょうか。綿は4つの種類に大別され、いわば親戚のような関係です。「スーピマコットン」など耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

同じ綿製品でもお手頃価格からそれなりに高価格帯まで存在するのは、綿の種類によるところでもあります。綿について知っておくことで、より納得・満足のいく商品と出会えると思います。

綿の繊維構造と特徴

まずは、綿としての共通の特徴を知っておきましょう。

綿の繊維は天然の機能性素材。構造を知っていると 「なぜ綿がいいと感じたのか」「どういうときに不向きなのか」 など、自分で判断できるようになりますよ。

綿繊維の基本構造

中空構造(ルーメン)

綿繊維はマカロニのような中空構造になっています。この空洞は「ルーメン」と呼ばれ、空気を含むことができます。 空洞があることでプチプチのような断熱構造がつくられ、保温性が高くなります。

平べったいリボン状の撚り

綿の繊維は扁平でねじれた形(撚り/より)をしています。繊維同士が絡みやすく糸を作りやすいです。

セルロースと親水性

綿の主成分はセルロース(食物繊維の1種)です。セルロースは水酸基(-OH)という親水基(水と結合しやすい)を多く含んでいます。綿は水や湿気を吸収しやすい性質=親水性ということになります。

吸湿性・吸水性・放湿性

吸湿性:湿気を吸う力

綿は空気中の湿気をよく吸収します。汗をかいても蒸れにくい。

吸水性:水を吸う力

綿は水分を素早く吸収します。中空構造・親水性のおかげですね。パイルなど表面積の多い生地だと特に吸水性が高くなります。

放湿性:湿気を逃がす力

繊維の中に水分を溜め込みやすいので、放湿には時間がかかります。汗を吸うものの乾きにくいわけですね。

織り方や編み方によって通気性を高めることで、この弱点をカバーすることも可能です。詳しくは「綿の吸放湿性と通気性」の記事もご参照ください。

糸と生地で広がる可能性

綿繊維そのものは基本的に同じセルロースでできていますが、糸の作り方や生地の織り編み方によって特性は変わります。

  • 細く長い糸を使えば、滑らかで高級感のある生地に
  • 太い糸を使えば、丈夫でざっくりとした風合いに
  • 織物にすれば、張りのあるシャツやシーツに
  • 編み物にすれば、伸縮性のあるTシャツや肌着に

など。

綿糸や生地の特徴については「綿糸の特徴:作られ方・太さ・撚り」「綿生地の特徴:織り方、編み方、加工方法」をご覧ください。

繊維の性質だけでなく、加工によって無限の可能性を持つ素材といえます。同じ綿100%でも着心地や機能が違って感じるのはこうした理由からなのです。

4種類の綿花

綿という素材についてのほかに、綿花の種類によっても変わります。大きくわけて4つの種類があり、それぞれ違う個性をもっています。

一口に綿といっても親戚関係のようなもので、全く同じものではないのです。

綿の種類

①ヒルスツム系

  • 中米原産、アップランド綿と呼ばれる(アメリカ綿)
  • 世界の生産量の約90%超を占めるもっとも一般的な綿
  • 手頃な価格で安定した品質

②バルバデンセ系

  • 南米ペルー原産。シーアイランド綿から改良され、スーピマコットンやエジプト綿など。
  • 繊維が長くなめらか。高級タオルや高品質下着などにも使われる
  • やや高価格帯、高品質

③アルボレウム系

  • パキスタンインダス河流域原産、デシ綿と呼ばれる
  • インド綿として流通しているのは主にこの系統
  • 江戸時代から日本でも栽培され、和綿とも呼ばれる
  • 短く太い繊維で、粗めの手触り。布団や脱脂綿向き

④ヘルバケウム系

  • パキスタンインダス河流域原産
  • アフリカなどで古くから栽培されてきた系統
  • 現在では商業的な用途はほとんどなく、現地で自家用に栽培される程度

実質、現在流通している綿は①ヒルスツム系(普通綿)、②バルバデンセ系(長繊維綿)、③アルボレウム系(インド綿)の3種となります。

主要な綿3種類の比較

特徴ヒルスツム系バルバデンセ系アルボレウム系
🌿品種アップランド、新疆の大部分シーアイランド(海島)、ギザ(エジプト)、スーピマ、スビン、ペルー、新疆長繊維インド綿(デシ綿)
📏繊維長中~中長(26~32mm)長~超長(34~50mm以上)短(20.6mm以下)
✋️肌触り一般的滑らかサラサラ
💪繊維強度強いより強い弾力性あり
💰️価格帯手頃高価手頃
👕主な用途日常使いの製品高級衣料・タオル夏物衣料・布団

触り心地の違い

  • ヒルスツム系: 一般的な綿製品の肌触り
  • バルバデンセ系: 特になめらか
  • アルボレウム系: サラサラした質感で通気性が良い

価格の違い

  • ヒルスツム系・アルボレウム系は手頃な価格で広く普及
  • バルバデンセ系のような高級綿は生産量が少なく高価

商品の選び方のヒント

タオル

  • 普段使いのタオルには、手頃で耐久性のあるヒルスツム系がいいかも。
  • ギフトや心地よさ重視の方には、肌触りに優れたバルバデンセ系がよさそう。

衣類

  • 日常使いのTシャツなどにはヒルスツム系が向きそうですね。
  • ジーンズ、チノパンのような丈夫さほしいものはヒルスツム系が適しています。
  • 夏の涼しい衣類には、通気性の良いアルボレウム系(インド綿)が気持ちよさそう。
  • 肌に直接触れる下着には、肌触りの良いバルバデンセ系が最適。

寝具

  • 掛け布団やタオルケットには、柔らかさや肌触りが重視されるため繊維の長いバルバデンセ系が向きそうです。
  • 敷布団にはアルボレウム系(インド綿)の弾力性が活躍します。

商品表示からわかること

  • 「スーピマコットン」「エジプト綿」「新疆綿」 : バルバデンセ系の一部の高級綿。価格はお高めですが、そのぶん高品質といえるでしょう。※新疆綿は特に高品質な超長綿が高級綿とされています
  • 「インド綿」 : アルボレウム系がほとんど。割と手頃でサラサラ感。インド産でもスビン綿は長繊維。
  • 「綿100%」のみ: おそらく一般的なヒルスツム系。日常使いには十分ですね。
  • 「オーガニックコットン」: 農薬を使わずに栽培された綿。綿の種類ではなく、栽培方法の違いです。

まとめ

同じ綿といっても4つの植物系統があり、それぞれに独自の特性がある。 私たちの衣類などに使われるのは 「ヒルスツム系(一般的なもの)」、「バルバデンセ系(高価なもの)」、「アルボレウム系(インド綿)」。

綿は吸湿性・吸水性の高い素材です。糸の作り方や生地の織り編み方によって、さまざまな製品が生み出されています。

目的に適した種類を知っていれば、商品選びの納得感が増すのではないでしょうか。

高級綿を使用した商品は製品表示に記載していることがほとんど。記載がなければヒルスツム系かな、と推測もできます。綿製品選びが少し楽しくなるかもしれませんね。

参考


綿1000%で調べてみる

Amazon、楽天市場、Yahooショッピングの商品から一度に検索できます。 よろしければキーワードを選んでいろいろな綿商品を見つけてみてください。

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