
目次
綿とポリエステルの違いと比較、使い分けかた
綿とポリエステルの違い
綿とポリエステル。どちらもよく目にする素材ですが、まったく違う性質があるんです。
この記事では綿とポリエステルの違いを、繊維・生地・お手入れの3つの視点から比較します。それぞれの良さを知ることで、用途に合った選び方ができるようになりますよ。
綿とポリエステルの性質について
綿(コットン)の概要
綿はアオイ科ワタ属の植物。種子を包むふわふわの毛から作られる天然の植物繊維です。やわらかな肌触りと吸湿性が特徴で、もっとも身近な素材といっても過言ではないでしょう。
※綿の品種の違いについてはこちらの記事で解説しています
ポリエステルの概要
ポリエステルは石油を原料とする合成繊維。いわゆる化繊(化学繊維)のひとつです。ペットボトルと同じPET(ポリエチレンテレフタレート)から作られています。現在では衣料用繊維の約半数がポリエステルというほど浸透しています。
繊維としての違い
繊維の構造と特徴
綿の繊維構造
- 天然の植物繊維で、繊維の中に小さな空洞がある
- 柔らかく、肌触りが良い
- 適度に空気を含み保温性がある
- 静電気が起きにくい
- 火や熱に強い(約400℃で燃える)
ポリエステルの繊維構造
- 石油からつくられた合成繊維
- 繊維が均一で強度が高い
- 形を保てる(プリーツ加工など)
- 静電気が起きやすい
- 火や熱に弱い(約260℃で溶ける)
綿は天然素材ゆえの柔らかさと吸湿性を持ちます。
ポリエステルは化学合成により耐久性や形状を保ちやすくするなどの機能性を高めています。
吸湿性の違い
繊維が自然に含む水分量を示す「公定水分率」で比較すると、綿とポリエステルでは大きな差があります。
綿はポリエステルの約20倍もの吸湿性があります。ポリエステルは繊維内に水分がほとんど入らない構造になっているため、吸湿性がとても低いです。※繊維自体には入りにくいですが、糸や生地の隙間にはある程度吸水します。
速乾性(放湿性)の違い
- 綿:繊維内に水分を保持しやすく、乾きにくい。汗を吸うと重くなりやすい
- ポリエステル:水分を保持しない構造のため、表面で水分が蒸発しやすく速乾性に優れる
ポリエステルは水分を繊維内に取り込まないので蒸発しやすいです。スポーツウェアに多く使われるのはこのためです。
一方綿は水分をしっかり吸収しますが、乾くまでに時間がかかります。
耐久性の違い
- 綿:洗濯に強く、高温にも耐えられる。縮みやすい
- ポリエステル:強度が高く破れにくい(綿の約2〜3倍)。シワになりにくい
ポリエステルは繊維自体の強度が高いため、洗濯を繰り返しても型崩れしにくく長く使えます。
綿も丈夫ですが、ポリエステルに比べるとやや劣ります。
ニオイや汚れ落ちの違い
- 綿:水溶性の汚れ、成分が落ちやすい
- ポリエステル:皮脂汚れなどを吸着しやすい
ポリエステルは親油性といって油やタンパク質(皮脂)を吸着しやすい性質があります。皮脂汚れは雑菌が繁殖しやすくニオイの原因に。
綿は親水性という水と馴染みやすい性質で、水に溶ける汚れが落ちやすいです。ポリエステルと比べると油汚れも落ちやすい傾向です。
生地としての違い
綿とポリエステルでは、繊維の違いにより向いた使い方も変わってきます。
綿の生地
綿は織物・編み物どちらにも幅広く対応できる素材。
価格も手頃で、目的に応じてさまざまな生地を作ることができます。肌に直接触れる衣類にぴったりです。
ポリエステルの生地
ポリエステルは機能性を活かした衣類やスポーツウェアが主流。
軽く速乾性があり丈夫なため、汗をかくようなスポーツウェアでよく使われます。洗濯してもシワになりにくいので手間いらず。
機能性の比較
綿は肌触りと吸湿性に優れ、ポリエステルは速乾性と耐久性に優れています。
洗濯、乾燥、お手入れ
綿
- 洗濯に強い
- 高温でアイロンがけできる
- 生地によってシワになる
- 縮みやすい
- 静電気が起きにくい
ポリエステル
- 洗濯に強い
- 高温に弱く、熱で溶けることがある
- シワになりにくい
- 縮みにくい
- 静電気が起きやすい
- 汚れやニオイを吸着しやすい
- 毛玉ができやすく取れにくい
ポリエステルはシワになりにくく、速く乾くので楽です。ただ汚れやニオイが染み付くと取れにくい点は注意。毛玉が固着して取れにくいという特徴もあります。
綿は縮みやシワが気になります。その他はオールマイティに対応できる点は気楽かもしれません。
綿とポリエステルの特徴を比較してみる
両者の特徴をまとめると、次のようになります。
具体的な選び方と使い分け
用途や季節に合わせて、綿とポリエステルを使い分けるのがおすすめです。
商品、カテゴリーによる使い分け
👕いつものTシャツはどっちもOK
どちらもOK。2つとも使いやすく洗いやすい。
- 綿:やわらかめの肌触りや保湿性、ほどよい保温性が気持ちいい
- ポリエステル:軽く着たい、シワを気にしたくないときなど。洗濯してもすぐ乾く
👔シャツ・ブラウスは形態安定を気にしたい
ポリエステルは素材自体がシワになりにくいですが、綿は形態安定加工されていないとシワになりやすい。
- 綿:肌触りが良いがアイロンがけが必要。形態安定加工されたものをおすすめ
- ポリエステル:素材自体がシワになりにくい。綿ポリ混紡素材が多い
🛌寝具(シーツ、パジャマ)はお好みで
わりと好みによるところが大きいです。筆者個人的には寝具まわりは綿素材が入っていると気持ちいいと感じます。
- 綿:肌触りが良く、吸湿性があり快適
- ポリエステル:お手入れが簡単で、シワになりにくい
👶子供服・ベビー服は成長に応じて
赤ちゃん用だと綿素材がかなり多い。幼児以降は活動量に応じて考えてもよさそうです。
- 綿:静電気も起こしにくく肌にやさしい。体温の高い赤ちゃんの汗も吸ってくれる
- ポリエステル混紡:汚れても洗濯しやすく、型崩れしにくい
夏や冬、季節による使い分け
☀️夏は両極端、工夫次第
正直なところどちらも手放しでは勧めにくいところ。どちらも通気性の高い生地(薄手、ガーゼやメッシュ)やゆとりのあるサイズ感を選ぶと、風が通って乾きやすくなります。
- 綿:吸湿性は高いが乾きにくい、汗が残りやすい
- ポリエステル:乾きやすいが吸湿性が低いので乾ききらなかったときに蒸れやすい
❄️冬は綿がおすすめ
乾燥する冬は断然綿をおすすめ。綿の保湿性、保温性、静電気の起きにくさでちょうどよく過ごせます。
- 綿:適度な保温性と吸湿性。静電気が起きにくい
- ポリエステル:フリースや中綿など空気を含む加工がされていれば保温性が高い(綿も同じ)。ただし静電気が起きやすい
肌質やライフスタイルによる選び方
👶敏感肌なら綿がおすすめ
- 綿:やわらかくチクチクしない、肌にやさしい
※アトピー性皮膚炎、肌への影響の記事もあわせて参考にしてみてください
🏃スポーツ・運動はケースバイケース
ポリエステルは密着して着ると気化熱で体温上昇を抑える効果があるそうですが(スポーツ用のインナーがぴったりしている理由ですね)、綿はゆとりを持った服のほうが体温を上げにくいそう。ケースバイケースですね。
- ポリエステル:軽くて動きやすい。ほぼ吸汗しないので乾かないとベタッと張り付く感覚も。※特殊な編み方や加工で吸汗性を高めたものもあります
- 綿:は汗をかいたあと乾きにくい。着替えの用意や通気性のよい服がベター
🔥キャンプや火の取り扱いはポリエステル✕
- 綿:熱に強く、溶けない(穴があくように燃える)
- ポリエステル:熱で溶けるため危険(肌に付着して火傷につながるなど)
まとめ:綿とポリエステルは真逆といってもいい。賢く選びましょう
綿とポリエステルは、どちらも優れた素材ですが性質はまったく異なりますね。
- 綿は肌触りと吸湿性の良さが魅力。 日常使いに最適
- ポリエステルは速乾性と耐久性、安定した形が優秀
とはいえ、現実的には一方だけを揃えることはないと思います。お手頃にバランスよく両方の良さを取り入れたいときは、綿とポリエステルを混ぜた混紡素材(綿ポリ、T/C素材) を選んでみるのも手ですね。
ポリエステル65%、綿35%は「黄金比率」とも呼ばれるらしく、両素材の長所を活かしたバランスの良い素材として、ワイシャツや作業着などに多く使われているそうです。
それぞれの特性を理解して、目的に合ったちょうどいい素材を見つけてみてください。
参考
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