
目次
綿とウール(羊毛)の違いと比較、使い分けかた
綿とウールの違い
綿とウール。どちらもよく使われる天然素材ですね。これらはまったく異なる性質を持っているため、向いている用途も異なります。
この記事では綿とウール(羊毛)の違いを植物と動物、繊維、生地の3つの視点から比較します。それぞれの良さを知ることで、用途に合った選び方ができるようになりますよ。
綿とウールの性質について
綿(コットン)の概要
綿はアオイ科ワタ属の植物。種子を包むふわふわした毛から作られる植物繊維です。種子毛(しゅしもう)と呼ばれるもので、コットンフラワーとして見たことがある方も多いのではないでしょうか。世界中で栽培され、最も身近な天然繊維となっています。
※綿の品種の違いについてはこちらの記事で解説しています
ウール(羊毛)の概要
ウールは羊の毛から作られる動物繊維。衣類に最もよく使われるのはメリノ種という品種です。セーターやマフラー、冬登山用インナーなど寒い時期のイメージが強いですが、実は夏でも快適に着られます。
繊維としての違い
吸湿性の違い
繊維が自然に含む水分量を示す「公定水分率」で比較すると、ウールは綿よりも高い吸湿性を持っています。
ウールは綿の約1.8倍もの吸湿性があります。すごい。綿も十分な吸湿性があり、ポリエステルの20倍以上もありますがやはりウールには敵いません。
放湿性の違い
- 綿:繊維内に水分を持ちやすく、放湿に時間がかかる。汗を吸うが乾きにくい
- ウール:吸湿性と放湿性の両方に優れる。湿気を吸っても発散しやすく蒸れにくい
ウールは湿気を素早く外に逃がすため、汗をかいてもサラッとした着心地を保ちます。綿は水分を保持する性質があるため、乾くまでに時間がかかります。
繊維の構造と特徴
綿の繊維構造
- 繊維の中に小さな空洞があり、空気を含む
- 繊維が細く柔らかい
ウールの繊維構造
- 表面がウロコ状(スケール)になっている
- クリンプと呼ばれる波状の縮れがある
- 繊維たくさんの空気を含む(体積の最大60%)
綿は繊維自体に空気や水分を含むことができ、糸の作り方や生地の編み方でしっかりした質感、通気性のよい質感などに幅広く対応できます。
ウールは髪の毛のキューティクルのように水を弾きつつ、乾燥していれば湿気を吸い、吸湿したら表面のスケールが開いて放出するという面白い仕組みになっています。
保温性の違い
- 綿:繊維内の空気が保温する。適度な保温性
- ウール:クリンプによる空気層で高い保温性。
綿は基本的にほどよく空気を含みます。ただし濡れると乾きにくく、保温性も失われてしまいます。ウールはより空気を含み、保温性が高いです。汗をかいても水分を出しやすいのでほどよい状態を保ちやすいです。
また、ウールは吸湿発熱効果も高いです。繊維は湿気を吸うと熱を発生させます。お風呂上がりに体が濡れていると冷えを感じる=熱を奪う「気化熱」という現象があります。それの逆で「吸着熱」という仕組みです。ウールは吸水量が多いので、発生する熱量も多いのですね。
生地としての違い
綿とウールでは、その繊維特性から向いている生地の種類が異なります。
綿の生地
綿は織物・編み物どちらにも幅広く対応できる素材。
細い糸から太い糸まで作りやすくバリエーションが豊富です。 価格も手頃で目的に応じてさまざまな生地を作ることができます。防縮、形態安定、シルケット加工など加工方法も多岐にわたります。
ウールの生地
ウールは弾力性と保温性を活かした編み物(ニット)が主流。
独特のふくらみと弾力性が特徴。価格は高めですが、保温性や吸放湿性などの機能性に優れています。ウォッシャブルや防縮加工などの付加価値加工があります。
機能性の比較
綿は柔らかさと肌触りの良さに優れ、ウールは保温性、吸放湿性、機能性に優れています。
お手入れの違い
綿
- 洗濯に強く、家庭で洗える
- 高温でアイロンがけできる
- 縮みやすい
- アルカリに強い
- 日光に強く、天日干しできる
ウール
- 基本的にドライクリーニング推奨
- 水洗いすると縮み、フェルト化のおそれ
- アルカリに弱い
- 毛玉(ピリング)ができやすい
- 虫害を受けやすい
- シワはスチームで回復
手入れのしやすさは断然綿が気楽です。どちらも縮むものの、ウールはフェルト化してしまうと風合いまで変わってしまいます。綿は煮洗い、アルカリ洗剤、漂白剤、天日干しなどほぼどんな洗い方にもかなり耐えられます。なお、乾燥機はどちらも縮みます。(筆者はガンガン綿を乾燥機にかけてますが…)
綿とウールの特徴を比較してみる
両者の特徴をまとめると、次のようになります。
綿とウールの選び方と使い分け
用途や季節に合わせて、綿とウールを使い分けるのがおすすめです。
夏や冬、季節による使い分け
❄️冬の寒い時期
- ウール:保温性と吸湿発熱効果で暖かく快適
- 起毛加工の綿:ふんわり温かい
🌸春・秋の季節
- 綿とウールどちらもOK
- 軽めのウールニット:温度調節しやすい
- 綿のカーディガン、パーカー:ちょうどいい
☀️夏の暑い時期
- 綿:吸湿性があり、肌触りが良い
- 薄手のウール:意外に通気性と放湿性で快適
服や商品による使い分け
👕日常使いの衣類(Tシャツ、カットソーなど)
- 綿:柔らかく着心地が良い、手頃な価格、洗濯しやすい
🧥セーター・カーディガン
- ウール:温かく機能性が高い
- 綿:柔らかく家庭で洗える
🛌寝具(掛け布団、毛布)
- ウール:吸放湿性に優れ、蒸れにくく快適。保温性が高い
- 綿(シーツ):肌触りが良く、洗濯しやすい
🩳肌着・下着
- 綿:柔らかく肌にやさしい
- メリノウール:肌触りが良く、機能性も高い
肌質や日常に合わせた選びかた
👶敏感肌
- 綿:柔らかくチクチクしない、汗をかくときは通気性を重視する
- エクストラファインメリノウール:特に肌触りが良い、保湿性も◎
🏃運動や汗をかくとき
- ウール:放湿性が高く、蒸れにくく快適。防臭効果もある
- 綿:吸汗するが乾きにくいので、風通しよいものや着替え準備がベター。洗いやすい
👌お手入れを楽にしたい
- 綿:多少手荒に扱っても大丈夫な安心感
まとめ:用途と好み、綿ウール混紡もあり
綿とウールは、どちらもおすすめの天然素材ですが性質はかなり違いますね。
- 綿は柔らかさと肌触りの良さ、お手入れのしやすさが魅力。 日常使いに最適で、価格も手頃
- ウールは保温性と吸放湿性、防臭・抗菌など機能的で優秀な素材。 ただし多少高価ですしお手入れにも気を遣うかも。
機能性ではウールが優れている面が多いですが、お手入れのしやすさや価格などを考えるとウールだけで揃えるというのも難しそうな気はします。お手頃にウールを取り入れてみたいときは、ウールと綿を混ぜた混紡素材を選んでみるのも手ですね。
それぞれの特性を理解して、目的に合ったちょうどいい素材を見つけてみてください。
参考
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