
目次
綿と臭いの関係 ニオイの種類と洗濯・落とし方
綿は臭いやすい?臭いにくい?
衣類の臭いが気になること、ありますよね。特に夏場や運動後など、汗をかいたあとの服のニオイは気になるものです。
「綿100%の服は臭いやすい」「化学繊維より綿のほうがいい」 など、さまざまな意見を耳にします。実際のところ、綿と臭いにはどんな関係があるのでしょうか。
この記事では、綿の繊維特性と臭いの関係、汗臭・足臭・加齢臭・わきが臭それぞれの原因と対策、他素材との比較など。できるかぎり科学的根拠にもとづいて解説します。
綿の特性と臭いの関係
綿は水分を吸いやすく乾きにくい
綿は吸湿性の高い素材です。ポリエステルの20倍以上もの吸湿性があります。※詳しくは吸放湿性と通気性の記事をご覧ください
汗や湿気をしっかり吸収するため肌側は乾いた状態になり、細菌の繁殖を抑えられます。逆に吸収したあと乾きにくい特徴もあるので、生乾きのままだと雑菌が繁殖して臭いの原因になってしまいます。
綿は油分を吸着しにくい
綿のような植物系繊維は、ウールや化学繊維と比べて、汗に含まれる油性の臭い成分を吸着する量が少ないことが研究でわかっています。
特にポリエステルは水分をほとんど吸収せず油分を吸着するため、水に溶けない臭い成分をよく吸収してしまいます。
綿は臭い成分そのものを吸着しにくい素材といえます。
臭いの種類と原因、落とし方
体臭はそれぞれ原因となる菌や物質が異なります。
汗臭さ
運動の後や暑い日に汗をかいたとき、時間が経つと気になってくるのが汗臭さ。だいたい汗をかいてから約1時間ほどで臭いが発生し始めます。
原因菌:マイクロコッカス属細菌
汗臭さの原因物質は複数の脂肪酸(皮脂)で、主な原因菌はマイクロコッカス属細菌です。皮膚にいつもいる常在菌で、汗や皮脂を分解するときに臭いを発生させます。
肌だけでなく洗濯後の衣類からも見つかるため、しっかり洗濯して菌を落とすことが大切です。
臭いの落とし方
- すぐに洗濯する(汗をかいたら放置しない)
- 弱アルカリ性洗剤を使う(皮脂を落としやすい)
- 酸素系漂白剤でつけ置き洗い(40~50度のお湯に30分程度)
- しっかり乾燥させる(水分が残っていると増殖しやすい)
足の裏の臭い
靴を長時間履いていたあと、靴下が蒸れたとき。鼻をつく強烈な臭いが特徴です。
原因菌:コリネバクテリウム属など
臭いの原因は、コリネバクテリウム属などの細菌が角質を分解してつくられるイソ吉草酸という成分。 特定悪臭物質に指定されるほど強烈な臭い成分です…
足の裏は汗腺が多く、1日にコップ1杯分もの汗をかきます。靴や靴下で蒸れやすく角質もたまりやすい環境。細菌が繁殖しやすく、臭い成分をたくさん作ってしまいます。
臭いの落とし方
- 汗をかいた靴下はすぐに洗濯(汗をかいたら放置しない)
- 弱アルカリ性洗剤+酸素系漂白剤を使用(皮脂を落としやすい)
- 重曹水につけ置き(イソ吉草酸は酸性なので、アルカリ性の重曹で中和)
加齢臭
加齢臭は40代頃から気になり始めます。古い油のような、脂っぽい臭いだと言われることが多いですね。男性のイメージが強いかもしれませんが、女性も更年期頃から気になることがあります。
原因物質:ノネナール
加齢臭の原因物質はノネナール。皮脂に含まれるパルミトレイン酸という成分が酸化・分解されることで発生します。 パルミトレイン酸自体は誰にでもあり、保湿や肌のバリアにもなるものなのですが、年齢を重ねると増えたり、酸化しやすくなったりするのです。
頭、脇、耳まわり、首の後ろ、背中など、皮脂の分泌が多いところから発生します。
臭いの落とし方
ノネナールは水に溶けにくい皮脂とタンパク汚れのため、通常の洗濯だけでは落ちにくいです。
しっかり落としたいときは皮脂汚れに特化した洗濯がおすすめ。毎回は難しいので、気になるときにやってみては。
- 40~50度のお湯に過炭酸ナトリウムを溶かす
- 30分ほどつけ置き
- 通常通り洗濯機で洗う
- しっかり乾燥させる
などですね。
わきが臭
わきが(腋臭症)は、特にわきから臭いを発しやすい体質のこと。思春期頃から気になりはじめることが多いです。遺伝性で体質的なもので、強弱も人それぞれ。
原因:アポクリン汗腺と皮膚常在菌
私たちの汗はエクリン腺、アポクリン腺という2種類の汗腺からつくられますが、わきが臭はアポクリン腺から分泌されるベタベタした汗が原因です。 汗自体は無臭ですが、皮膚にいる常在菌(ブドウ球菌属やコリネバクテリウム属など)が汗の成分を分解することで臭い物質が発生します。
臭いの落とし方
- 汗をかいた衣類はすぐに洗濯(衣類にも汗の成分が残ってしまう)
- 必要に応じて酸素系漂白剤での漬け置き、煮洗い、塩化ベンザルコニウムでの漬け置きなど
- クエン酸漬け置きやクエン酸配合柔軟剤で中和(アポクリン汗腺の汗はアルカリ寄り)
- しっかり乾燥させる
- 通気性の良い衣類を選ぶ(菌の繁殖を抑える)
- 綿100%やウールのインナーを着用(吸湿性が高い)
一度着た服が臭いやすくなることもあります。これは汗の成分や常在菌が衣類に残っていて、生乾きや次に着て湿ったときに菌が活発に活動してしまうから。できるだけ水量多めでしっかり洗うことが望ましいと考えられます。
臭い落としによく使う洗剤・材料
臭いの種類や使いやすさに応じて使い分けるとよいですね。
使いやすいのはセスキ炭酸ソーダの漬け置き、柔軟剤としてクエン酸を使うなど。石鹸洗濯も慣れれば簡単かもしれません。過炭酸ナトリウムも除菌漂白剤として常備すると便利。
重曹は加熱すると強アルカリになるため煮洗いにも効果的です(生地の痛みには注意)。炭酸ナトリウムは強アルカリのため使い所に気をつけたいところ。
綿は臭いを落としやすい?他の素材との比較
素材別の臭いのつきやすさ
研究結果から、素材によって臭いのつきやすさが異なることがわかっています。
ポリエステルは臭いがつきやすい
ポリエステルは吸湿性が低く、石油由来の化学繊維の特性として油やタンパク質などとなじみやすいです。そのため皮脂・汚れを吸着しやすいといえます。
生地表面は速乾なのですが、湿気を吸わないため肌側の汗が残って蒸れやすくなります。 運動時の速乾性は優れていますが、日常使いでは臭いがつきやすいので注意が必要ですね。
綿と麻は臭いにくい
綿や麻などの植物素材は、吸水性・吸湿性に優れており、素材自体が汗や臭いを吸収してくれるため、臭いが外に伝わりにくい特徴があります。 ※臭わないわけではない
水となじみやすく油性の臭い成分は吸着しにくいため、比較的臭いがつきにくいといえます。
ウールは臭いを閉じ込める
ウールやナイロンは最初は多くの臭い成分を取り込むものの、ポリエステルよりも早く放出します。
また、ウールは繊維の中(コルテックス)で臭い成分を結びついて閉じ込めるという性質があります(洗うことで落ちもする)。天然の防臭効果ですね。吸放湿性の高さもあいまって、干すだけでもある程度すっきりするといえます。
よくある疑問
綿に抗菌作用があるって本当?
綿そのものに抗菌作用はありません。綿は天然繊維ですが、抗菌効果まではありません。
抗菌加工がされている商品であれば効果があるといえるでしょう。
綿製品は洗濯しても臭いが残りやすい?
綿は吸水性があるため、汗を大量にかくと乾きにくく、洗濯後も生乾きの状態だと雑菌が繁殖しやすくなります。
ポイントは早めに洗い、しっかり乾燥させること。部屋干しでも扇風機や除湿機を使って完全に乾かせばOK。アルカリ材や酸素系漂白剤を使うと皮脂や汚れを落としやすいです。
綿とポリエステルの混紡は臭いやすい?
いわゆる綿ポリ素材、両方の特徴をもっています。ということは、ポリエステルの割合が多いほど臭いがつきやすくはなるでしょう。
普段使いには綿100%か綿の割合が高いもの、運動にはポリエステル割合を高く、など使い分けるのがおすすめです。
まとめ
綿はポリエステルなどの化学繊維に比べて臭いがつきにくい素材です。とはいえ湿った状態だと臭いが出やすくなるので、着たものは早めに洗うことが大事ですね。
臭いの種類や原因はさまざまです。綿の特性や臭いの質を理解して、賢く対策していきましょう!
参考
- ポリエステル製の衣類は綿製よりも臭くなりやすいことが判明 - GIGAZINE
- 花王株式会社:汗をかいた後に衣類から発生するニオイ成分とその原因菌を解明
- 宮本真由美, 坪井良治:足の悪臭の原因は?臨床皮膚科 68巻5号
- 大阪公立大学・東京大学:腋臭症(わきが)のニオイの原因となる菌を遺伝子レベルで解析
- 資生堂:加齢臭について
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