
目次
綿糸の特徴:作られ方・太さ・撚り
糸が製品品質を決める理由
同じ綿100%でも、糸の違いが肌触りや価格の違いにつがなります。この記事では糸の作り方、太さ、撚り方(よりかた)についての解説いたします。綿製品を選ぶ際のポイントもご紹介します、ぜひご参考ください。
糸の作られ方
「綿花→繊維と種子にわける→線維の調整→繊維を紡績」 という過程で糸になります。綿の繊維は短く、撚り合わせないと長い「糸」になりません。紡績によってつくられた糸はスパン糸とも呼ばれます。
綿花から:カード糸とコーマ糸
繊維と種子をわけたあと、繊維を調整することでより品質の良い糸に仕上げることができます。調整工程がカーディング、コーミングです。
カーディング(梳綿 そめん)
繊維を櫛で均して方向を揃えます。繊維が平行になり、細かいゴミなどを取り除きます。糸にするための必須工程です。
コーミング(精梳綿 せいそめん)
更に細かくゴミや短い繊維などを取り除き、引き伸ばす工程です。より高品質な糸をつくるときに必要です。
カード糸とコーマ糸の違い
- カード糸:カーディングを行った=一般的な糸。すべての糸がこの工程を通る
- コーマ糸:コーミングを行った高級糸。繊維の方向が揃っているので滑らかで毛羽が少ない。工程が多い+余分な繊維除去により量が減るため高価。
カーディング工程のあとにコーミング工程をおこなうかどうかで価格や品質の変化があるということですね。コーミングを経た糸を「コーマ糸」 と呼びます(不純物除去率が低めなのがセミコーマ糸)。呼称がなければカード糸と思われます。
紡ぎ方:リング糸とオープンエンド糸
糸を紡ぐ段階で使う機械(精紡機)の種類によっても糸の性質が変わります。
リング糸(リングスパン)
縄やこよりのように、機械で引き伸ばし、撚りをかけて作られた糸。均一で引き締まり、強度の高い糸です。日本の紡績の主流。
オープンエンド糸(空紡糸)
空気の流れで糸を絡み合わせ糸にします。糸の太さにばらつきが出て、強度は低め。ある程度太さのある繊維でのみ使えます。欧米では多く使われています。
糸の太さによる特徴
番手
綿のような糸の太さは「番手(綿番手)」で表します。規定の重さにたいしてどれくらいの長さがあるか、という考え方で、細いほど大きい番手になります(恒重式)。1番手=1ポンド(453.6g)で840ヤード(768.1m)の長さとされます。
小さい番手の糸は太く強く、大きい番手は細く滑らかになります。細番手は原料綿の繊維が長くないと作れないため(超長綿)、より高級になります。
※綿の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。 綿の種類と特徴:用途別解説
主に綿以外で使われる太さの単位
補足として。
デニール
ストッキングなどで耳にしたことがあるかもしれません。 9,000mあた1gのものを1デニール、番手とは逆に数字が大きいほど太くなります(恒長式)。9,000mあたり50gなら50デニール、100gなら100デニール。同じ長さでも重くなる=太い、という解釈です。
テックス
デニール同様数字が大きいほど太くなります。1000mあたり1gを1テックスとします。世界標準化機構ではテックスを表示すべきと推奨しているとか。
糸の撚り(より)方
撚りの強さ
糸のひねりの強さ。紙をひねって作る「紙縒り(こより)」と同じですね。紡績の工程で糸を撚ります。撚りの強さで糸の風合いや感触が変わってきます。
綿ではおもに1インチ(2.54cm)あたりの撚りの回転の多さで強弱が判断されます。
甘撚り(あまより、弱撚り)
撚りが少ない糸。ふんわりとして手触りがよく、柔らかです。ニットやタオルなどの吸水性を重視する製品に多く使用されています。
強撚(きょうねん)
撚りが多い糸。しっかりとした質感でシャリ感があります。撚りが強いほど強くなります。毛羽が少なくサラッとしているため、夏物衣料に多く使われます。
無撚糸(むねんし)
ほとんど撚りのない糸。紡績時の撚りを後工程で戻し、ほとんど撚りのない状態にしたものが多い。撚りがないぶん繊維の間に空気を含みやすく、ふんわり高吸水になります。
単糸と双糸
1本の糸から作るか、2本以上の糸を合わせてひとつにするかの違いです。
単糸
1本の糸をそのまま使用したもの。安価で細く、ざっくりとした生地感。
双糸
2本の糸を撚り合わせたもの。より太く、強度、弾力性が増します。価格は単糸より高め。
40番手の糸を2本撚り合わせた双糸は「40/2」と表記され、20番手単糸「20/1」と同じ太さになります。細い糸を組み合わせることで太い糸のような特性を表現できるというわけですね。
どんな商品にどんな糸が使われる?
紡績工程、太さ、撚り方を総合して、商品での使われ方を見てみましょう。 ※すべて一般的かつ推定での内容です
👕 Tシャツ
厚みの単位、オンス(oz)にも糸の太さが関わっています。5.6オンスTシャツは17番手前後が使われるようです。高品質なものはコーマ糸を使用していますね。
👔 ワイシャツ・ブラウス
カジュアルなら中番手の単糸、高級シャツには細番手の双糸が多く使用されています。細番手双糸は上品な光沢とシワの付きにくさが特徴です。
🧼 タオル類
吸水性やふわふわ感を重視するため、太めで甘撚りの単糸を使うことが多いようです。毛羽落ち少なく長持ちさせるために双糸を使用することも。
高価格になりがちな糸
- コーマ糸:コーミング工程、破棄する材料の増加
- 細番手:原料が絞られる、精紡工程の増加
- 双糸:製造工程の増加
コーマ糸はカード糸より高価格となり、双糸は単糸より高価格になりがちです。
商品選びのヒント
使用頻度で選ぶ
- デイリーユース:丈夫さ重視でカード糸や中番手(20-40番手) がおすすめ。コスパ良好
- 特別な時に:見た目や肌触り重視でコーマ糸や細番手(60番手以上) が嬉しいかも
季節や用途で選ぶ
- 夏用衣類:強撚糸や細番手でさらっとした肌触り。通気性あり
- 冬用衣類:甘撚りや中番手で空気を含みふんわり。保温性あり
- タオル類:甘撚りや無撚糸で吸水性重視。繊維に空気含んでふわふわ
肌質に合わせて選ぶ
- 敏感肌の方:コーマ糸がおすすめ。毛羽立ち少なく刺激少なめ
- 一般的な肌質:カード糸でも十分。価格を抑えて日常使い
長く使いたい
- 双糸や太番手:高耐久。価格は高め
商品表示の見かた
商品ページやタグで糸の情報を確認するポイントをご紹介します。
🔍️ よく見つかる表示
- 「コーマ糸使用」:高品質で肌触りよし。寝具で見がち
- 「双糸」「/2」の表記:強度があり長持ちしやすい
- 「リングスパン」:なめらかで均一。Tシャツで見がち
📖 番手表示の読み方
- 「20/1」のような表記:20番手の単糸。
- 「40/2」のような表記:40番手の糸を2本撚り合わせた双糸。↑と同じ太さになる
まとめ
糸を知ることで用途や予算に合った綿製品を選べるようになりますね。綿糸といってもかなりのバリエーションがあることがわかりました。
糸のまとめメモ:
- コーマ糸は肌触りが良いく価格は高め
- 番手が大きいほど細くて高級
- 撚りは弱いほどやわらかで強いほどなめらか
- 双糸は丈夫で長持ちする
参考:豊田自動織機、無撚糸様撚糸及び無撚糸様撚糸の製造方法、はじめて学ぶ繊維(信州大学繊維学部)
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