
目次
綿の吸放湿性と通気性。他素材と比較|データで選ぶ最適な素材
綿の吸放湿性と通気性について
綿は汗をよく吸い、蒸れにくいとされています。 これらは吸放湿性と通気性という2つの性質が理由です。
吸放湿性は、湿気や汗を吸収、放出する能力です。汗をかいた時に一旦吸い取り、その後ゆっくりと外に逃がしてくれるので、さらっとした質感になります。
通気性は、生地の中を空気がどれだけ通り抜けられるか。風が通りやすい生地だと、体から出る熱や湿気がこもらず、蒸れにくくなります。
この2つがうまく働くことで、暑い日は涼しく、寒い日も蒸れにくい快適な着心地になるのです。
綿と他素材の吸湿性データ
綿やその他の素材はどの程度の吸湿力なのでしょうか。 吸湿力は「公定水分率」で確認できます。日本の税関資料で値が出ているのです。数値が大きいほど自然に含む水分量が多くなります。
綿はポリエステルの20倍以上も湿気を吸うことがわかります。また、羊毛や麻ほど高くはないので「よく吸うけれど、吸いすぎない」という程よいバランスですね。
放湿性は素材によって異なる
放湿性は素材によって大きく変わります。測り方の基準はあるものの、各素材の詳しいデータを見つけることはできませんでした。とはいえ、繊維の構造によって以下の傾向があるようです。
素材ごとの放湿性
- 綿:繊維内部に水分を蓄積しやすく、放湿に時間がかかる
- 麻:繊維の中が空洞になっていて放湿が早い
- 羊毛:湿気を多く含んでも放湿効率が良い
- ポリエステル:水分を保持しないため、最も放湿が早い
綿は水分を含むと逃しにくい。これは汗を吸うが乾きにくいという性質を表しています。
ウール(羊毛)は繊維表面にスケールという毛羽が立っていて、湿度に応じて開閉する仕組みになっています。湿気を含むと開いて放湿するという面白いシステムです。
また、汗をかく状況では綿よりもポリエステルの方が体温上昇を抑えられるという実験結果も報告されています。ポリエステルは水分を中に維持しないため発散しやすいのですね。
通気性は織り方で大きく変わる
通気性については、素材の種類よりも織り編み方、厚み、密度といった生地の影響が大きくなります。
通気性を測る試験もありますが、それも「布を通過する空気量」を測るものです。素材ではなく生地の性質によって結果が変わるということですね。
同じ綿素材でも:
- ガーゼのような粗い織り:風がよく通る
- 高密度シャツ地のような密な織り:風を通しにくい
このように、同じ素材でも生地次第で大きく変わることがイメージできるかと思います。
※ぴったりした服よりもゆったりサイズのほうがより空気が動くため通気性が向上します
綿素材の糸、生地による性質の違い
さらに同じ「綿100%」表示でも、糸の加工と生地の構造によって吸放湿性、通気性は大きく変わります。
糸による違い
撚り(より)
- 甘撚り・無撚糸:ふんわりした風合いで吸水性が高い(タオル用途)
- 強撚糸:シャリ感があり清涼感を演出(夏物衣料向き)
番手(太さ)
- 太番手:丈夫で厚手だが通気性は低め、デニムやパンツなど
- 細番手:滑らかで通気性があり、高級シャツやインナーなど
生地による違い
吸放湿性、通気性を他の素材と比べてみる
各素材の特徴をざっくり整理すると、以下のようになります。
綿はオールマイティな存在で、極端な特徴はないものの幅広い用途に対応できることが分かりますね。ただし放湿性は低めなので、汗をびっしょりかくようなタイミングでは逆に熱がこもって感じるかもしれません。着替えや他の素材の検討もありでしょうか。
ポイント
- 綿は「バランス型」。極端な性能ではないが幅広く使える
- 麻は夏用に最適。通気性、涼しさは随一
- 羊毛は冬用に強い。湿気を含んでもほどよく発散、温かい
- ポリエステルは吸わないがすぐ乾くため、運動や洗濯頻度が高い用途に向く
夏・冬・運動時の最適素材の選び方
吸放湿性と通気性は、素材単体の性質だけでなく、糸や生地にも大きく左右されることが分かりました。
- ⛱️夏季の清涼感重視 → 麻や綿の強撚糸シャツ、ガーゼ生地
- ❄冬季の保温性重視 → 羊毛、起毛加工、厚手パイル、多重ガーゼ
- ⚽️運動時の速乾性重視 → ポリエステルやナイロンのメッシュ構造
- 👕通年の快適性重視 → 綿ブロード、綿ニットなど
まとめ
単純に「綿だから涼しい」「化学繊維だから不快」とは言えません。素材の特徴を上手に活かして選べるようになれば、失敗した!と思うことも減るかもしれません。
それぞれの素材を適材適所で使っていきたいですね。
参考
- 財務省税関 紡織用繊維の正量混用率の算出に使用する公定水分率(PDF)
- カケン 通気性試験 (JIS L 1096) - カケン 透湿性試験(JIS L 1099)
- 被服による皮膚圧迫が体温調節反応に及ぼす影響(PDF)
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