綿と麻(リネン)の違いと比較、使い分けかた
基礎知識
2025年9月30日

綿と麻(リネン)の違いと比較、使い分けかた

綿と麻の違い、知っていますか?

綿と麻。どちらも天然素材ですが実はまったく違う植物です。同じように見える布製品でも、原料が違えば特徴も変わってきます。

この記事では綿と麻(リネン)の違いを植物、繊維、生地の3つの視点から比較します。それぞれの良さを知ることで、用途に合った選び方ができるようになりますよ。

植物としての違い

綿と麻では、そもそも繊維を採取する部位が異なります。

綿(コットン)

綿はアオイ科ワタ属の植物。種子を包むふわふわした毛から作られます。種子毛(しゅしもう)と呼ばれるもので、コットンフラワーとして見たことがある方も多いのではないでしょうか。

約8000年前のメキシコで栽培されていた記録があり、長い歴史を持つ素材です。現在では世界中で栽培され、最も身近な天然繊維となっています。

綿の品種の違いについてはこちらの記事で解説しています 

麻(リネン)

麻は植物の茎の靭皮(じんぴ:内側のやわらかい部分)から採れる繊維のことです。特定の種類のことではなく、リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ヘンプ(大麻)など約20種類ほどが存在しています。衣類として主に使われるのはリネンとラミーです。

※日本の家庭用品品質表示法では、リネンとラミーのみが「麻」表示を許可されています。ヘンプなどは「植物繊維」と表記されます。

出典:日本麻紡績協会「リネン(亜麻)について」

リネン(亜麻) は亜麻科の植物で、フラックスとも呼ばれます。主な産地はフランス北部やベルギーなど比較的寒い地域。紀元前8000年頃から使われており、人類最古の繊維ともいわれています。

ラミー(苧麻) はイラクサ科の多年草で、「からむし」とも呼ばれます。主に中国やアジアの熱帯地方で栽培されています。繊維が太く長く、リネンよりもハリが強いのが特徴です。

出典:一般財団法人ボーケン品質評価機構「亜麻(リネン)・苧麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)について」

繊維としての違い

綿と麻では繊維の性質が大きく異なります。

吸湿性の違い

繊維が自然に含む水分量を示す「公定水分率」で比較すると、麻は綿よりも高い吸湿性を持っています。

繊維公定水分率(%)
麻(亜麻・ラミー)12.0
綿8.5
ポリエステル0.4

出典:財務省税関「公定水分率一覧」

麻は綿よりも約1.4倍の吸湿性があります。綿も十分な吸湿性を持っており、ポリエステルの20倍以上も湿気を吸います。(ポリエステルはほとんど吸水しないんですね)

放湿性と速乾性の違い

  • 綿:繊維内部に小さな空洞があり、水分を吸いやすく、放出に時間がかかる。汗を吸うが乾きにくい
  • :繊維の中の空洞が大きく、吸水しても放湿が早い。汗を吸ってもすぐに乾く

どちらも中空ですが、その度合いが違うんですね。

麻は吸った水分を素早く外に逃がすため、汗をかいてもサラッとべとつきにくいのが特徴です。綿は水分を保持しやすいため、乾くまでに時間がかかります。

※綿については吸放湿性、通気性についての記事でも詳しく解説しています

繊維の強度

  • :天然繊維の中で最も強靭。水に濡れるとさらに強度が増す
  • 綿:麻ほどではないが十分な強度。水に濡れると強度が増す

どちらも洗濯に強い素材ですが、麻の方がより高い耐久性を持っています。綿はやわらかな質感を出しやすいです。

肌触りの違い

  • 綿:ふわふわで柔らかく、肌にやさしい。チクチク感が少ない
  • :ハリ・コシが強く、シャリ感がある。肌に張り付かない清涼感。ざらざら感じることも

繊維の強度と同様にはなりますが、綿は繊維が細く柔らかいのに対し、麻は繊維が強くしっかりとした質感になります。

生地としての違い

同じ織り方や編み方でも、素材によって生地の特性は変わります。

風合いと質感

特徴綿麻(リネン)
質感やわらかいハリ・コシがある
肌触りなめらかシャリ感、サラサラ
光沢控えめやや光沢あり
シワできやすいとてもできやすい

機能性の比較

機能綿麻(リネン)
吸湿性
放湿性
通気性
保温性
耐久性
速乾性

綿は保温性と柔らかさに優れ、麻は通気性と速乾性に優れています。

お手入れの違い

綿

  • 洗濯に強く、繰り返し洗える
  • アイロンがけしやすい(高温OK)
  • 縮みやすい
  • 毛羽立ちやすい

  • 洗濯に非常に強い(濡れると強度増す)
  • シワになりやすい
  • 縮みやすい
  • 汚れが落ちやすい(ペクチン※の効果)

※ペクチン:汚れを染み込みにくくする性質がある成分。このため抗菌性があるともいわれています。

綿と麻の特徴を比較してみる

両者の特徴をまとめると、次のようになります。

特徴綿麻(リネン)
メリット・柔らかく肌触りが良い
・保温性がある(空気を含む)
・吸湿性がある
・染色性に優れる
・価格が手頃
・オールシーズン使える
・通気性が優れている
・吸湿性・放湿性が高い
・シャリ感で肌に張り付かない
・速乾性がある
・涼しさを感じる
・天然繊維で最強の強度
・汚れが落ちやすい
・抗菌性がある
デメリット・乾きにくい
・シワになりやすい
・縮みやすい
・毛羽立ちやすい
・価格が高め
・やや冷たく感じる(放湿、通気性ゆえ)
・シワになりやすい
・縮みやすい
・染色しにくい(色移りしやすい)
・粗めの質感

季節に合わせた選び方、用途による使い分け

用途や季節に合わせて、綿と麻を使い分けるのがおすすめです。

季節による使い分け

🌊夏の暑い時期

  • 麻:通気性・速乾性に優れ、肌に張り付かないので快適
  • 強撚糸の綿:サラッとした質感で夏向き

🏵️春・秋の季節

  • 綿と麻どちらもOK
  • 綿麻混紡:両方の良さを活かせる

⛄️冬の寒い時期

  • 綿:保温性に優れ、ふんわり温かい
  • 起毛加工の綿:さらに温かく

用途による使い分け

👕日常使いの衣類(Tシャツ、カットソーなど)

  • 綿:柔らかく着心地が良い、手頃な価格

👗夏の衣類(シャツ、ブラウス、ワンピース)

  • 麻:涼しく快適、上品な雰囲気
  • 綿麻:麻の雰囲気を楽しみつつ柔らかさもある

🛀タオル類

  • 綿:吸水性が高く、ふわふわで肌触りが良い

🛌シーツ・寝具

  • 綿:保温性があり、一年中快適
  • 麻(夏用):通気性が良く、さらっと涼しい

🩳肌着・下着

  • 綿:柔らかく肌にやさしい

肌質による選び方

👶敏感肌の方

  • 綿:柔らかくチクチクしない

🎐汗をかきやすい方

  • 麻:速乾性が高く、蒸れにくい

👩‍🦰一般的な肌質

  • 用途に合わせて選ぶ、綿麻混紡もグッド

まとめ:好みと季節に合わせて選ぶのがおすすめ

綿と麻は、どちらも優れた天然素材ですが性質が異なります。

  • 綿は柔らかさと保温性のバランス型。 オールシーズン使いやすく、日常使いに最適
  • 麻は通気性と速乾性に優れた夏向き素材。 丈夫で上品な雰囲気

どちらが良いということではなく、季節や用途、好みに合わせて選ぶのが賢い選択といえるでしょう。また、綿と麻を混紡した「綿麻(コットンリネン)」は、両方の良さを活かせる素材として人気があります。

それぞれの特性を理解して、目的に合った素材を選んでみてくださいね。

よろしければ、綿の種類と特徴綿の吸放湿性と通気性についても併せてご覧ください。

参考

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